
双極性障害は、単なるこころの悩みではないため、カウンセリングだけで治るものではありません。しかし、この双極性障害という病気そのものをしっかり理解し、それ対するこころの反応に目を配りつつ、治療が円滑に運ぶよう援助していくための精神療法が必要です。この精神療法を、医師の立場からは、心理教育といいます。
心理教育ではまず、病気の性質や薬の作用と副作用を理解し、再発のしるしは何なのかを自分自身で把握することをめざします。再発をほうっておくと自分でも病気の自覚がなくなり、病院に来ることができなくなってしまいますが、初期に治療を開始すれば、ひどい再発にならなくてすむからです。
そのため、再発した時に、最初に出る症状(初期徴候)を確認し、本人と家族で共有することが大事です。再発のきっかけになりやすいストレスを事前に予測し、それに対する対処法などを学ぶことも有効です。
また、規則正しい生活をおくることも、双極性障害の治療にはよい効果があります。徹夜を避け、朝はしっかり日の光を浴び、散歩などの軽い運動をする、といった形で、できる限り一定のスケジュールで生活することは、病気の安定化にとても大切です。
認知行動療法
認知行動療法では、物事の評価や解釈の仕方(=認知)に注目する治療法です。その人の認知が生きづらくしている部分を見つけ出し、少しずつ修正していくのです。
極端になったものの考え方や受け止め方を、現実的で柔軟なものに変えていく療法です。
双極性障害の認知行動療法では、気分の変化によって認知も変わってしまいます。このため、気分の変化による思考や認知、行動パターンの変化そのものに注目して、それを最小限にしていくように意識していきます。
双極性障害では、気分の変化によって認知も変わってしまいます。そのため、気分の変化による認知や行動パターンの変化そのものに注目して、できるだけ変化を最小限にしていくように意識していきます。
まずは日々の出来事から、考え方のクセ(自動思考)を見つけ出していくことから始めていきます。
【うつ病とカウンセリング ー認知行動療法ー】も併せてご覧ください。
対人関係・社会リズム療法
双極性障害では、2つのリズムが大切になります。
双極性障害の患者さんでは
- 睡眠を中心とした生活リズムの乱れ
- 対人関係を中心とした社会的な刺激の変化
が症状を不安定にさせる大きな要因となります。
双極性障害の対人関係・社会リズム療法では、この2つのリズムを整えることを目指します。
生活リズムはイメージしやすいかと思います。社会リズムは、人間関係のストレスを量としてとらえて、適切にコントロールできるようにしていきます。
規則正しい生活リズムとバランスの良い対人交流を目指していきます。そのうえで少しずつ、直接の対人関係に目を向けていくようにします。