双極性障害(躁うつ病)とは

双極性障害は気分が高まったり(躁状態)落ち込んだり(鬱状態)、躁状態とうつ状態を繰り返す、精神疾患の中でも「気分障害」と分類されている疾患のひとつです。昔は「躁うつ病」と呼ばれていましたが、現在では両極端な症状が発生するという意味の「双極性障害」と呼ばれています。


躁の種類 ー躁状態と軽躁状態ー

生活(家庭や仕事)に重大な支障をきたし、人生に大きな傷跡を残してしまいかねないため、入院が必要になるほどの激しい状態を「躁状態」といいます。


一方、はたから見ても明らかに気分が高揚していて、眠らなくても平気で、ふだんより調子がよく、仕事もはかどるけれど、本人も周囲の人もそれほどは困らない程度の状態を「軽躁状態」といいます。


双極性障害の種類と特徴

双極I型障害

うつ状態に加え、激しい躁状態が起こる双極性障害です。


激しい躁状態の場合、気分が高ぶって多弁になって家族や周囲の人に休む間もなくしゃべり続け、家族を疲労困ぱいさせてしまいます。まったく眠らずに動き回ったりと、活動的になります。


仕事や勉強にはエネルギッシュに取り組むのですが、ひとつのことに集中できず、何ひとつ仕上げることができません。


ギャンブルにのめり込んだり、高額のローンを組んで買い物をしたり、物事が行きすぎて、法的な問題を引き起こしたりする場合もあります。


失敗の可能性が高いむちゃなことに次々と手を出してしまったり、上司と大ゲンカして辞表を叩きつけたりするような社会的信用や財産、職を失ったりする激しい状態になることもあります。


また、自分には超能力があるといった誇大妄想をもつケースもあります。


双極II型障害

うつ状態に加え、軽躁状態が起こる双極性障害です。いつもよりも妙に活動的で周りの人から「何だかあの人らしくない」「元気すぎる」と思われるような軽い状態は、軽躁状態と呼ばれます。


双極II型障害の軽躁状態は、躁状態のように周囲に迷惑をかけることはありません。いつもとは人が変わったように元気で、短時間の睡眠でも平気で動き回り、明らかに「ハイだな」というふうに見えます。


いつもに比べて人間関係に積極的になりますが、少し行き過ぎという感じを受ける場合もあります。


躁状態と軽躁状態に共通していえることは、多くの場合、本人は自分の変化を自覚できないということです。大きなトラブルを起こしていながら、患者さん自身はほとんど困っておらず、気分爽快でいつもより調子がよいと感じており、周囲の困惑に気づくことができません。


躁状態の症状

  • エネルギーにあふれ、気分が高まって元気になった気がする

  • あまり眠らなくても元気

  • 急に偉くなったような気になる

  • なんでもできる気になる

  • おしゃべりになる

  • アイデアが次々に浮かんでくる

  • 怒りっぽくなる

  • すぐに気が散る

  • じっとしていられない

  • 浪費

  • 性的逸脱

うつ状態の特徴と症状

うつ状態とは?

気分が落ち込んで活動を嫌っている状況であり、思考、行動、感情、幸福感に影響が出ます。


こうした状態にほぼ一日中陥り、長い期間続くというのが「うつ病の代表的な症状」です。詳しくは【うつ病ってどんな病気?】をご覧ください。


  • 憂うつな気分

  • 気持ちが重い

  • 思考力・集中力の低下

  • 物事が面倒になる

  • 何もする気にならない・できない

  • さまざまなことに対して否定的になる

  • 感情のコントロールができない

  • 悲しい気持ち

  • 絶望感に陥る

  • 性欲の減退(まれに増加)

  • 死にたくなる

双極性障害の治療の現状

双極性障害は、精神疾患の中でも治療法や対処法が比較的整っている病気で、薬でコントロールすれば、それまでと変わらない生活をおくることが十分に可能です。


しかし放置していると、何度も躁状態とうつ状態を繰り返し、その間に人間関係、社会的信用、仕事や家庭といった人生の基盤が大きく損なわれてしまうのが、この病気の特徴でもあります。 


このように双極性障害は、うつ状態では死にたくなるなど、症状によって生命の危機をもたらす一方、躁状態ではその行動の結果によって社会的生命を脅かす、重大な疾患であると認識されています。


双極性障害は決して珍しい病気ではない

双極性障害の発症のしやすさはに男女差はなく、20代から30代前後に発症することが多いとされていますが、中学生から老年期まで、幅広い年齢で発症する病気です。

双極性障害は見逃されやすい

双極性障害では、最初の病相(うつ状態あるいは躁状態)から、次の病相まで、5年くらいの間隔があります。躁やうつが治まっている期間は何の症状もなく、まったく健常な状態になります。しかし、この期間に薬を飲まないでいると、ほとんどの場合、繰り返し躁状態やうつ状態が起こります。


治療がきちんとなされていないと、躁状態やうつ状態という病相の間隔はだんだん短くなっていき、しまいには急速交代型(年間に4回以上の病相があること)へと移行していきます。薬も効きにくくなっていきます。


双極性障害で繰り返される躁状態の期間とうつ状態の期間を比較すると、うつ状態の期間のほうが長いことが多く、また先述の通り、本人は躁状態や軽躁状態の自覚がない場合が多いので、多くの患者さんはうつ状態になった時に、うつ病だと思って受診します。


そして病院にかかった時に、以前の躁状態や軽躁状態のことがうまく医師に伝わらない場合、治療がうまく進まないことがあります。 このように、双極性障害が見逃されている場合も少なくないと思われます。