
うつ病とカウンセリング(認知行動療法)にて紹介したとおり、カウンセリングには主に、認知症状の改善に焦点をあてた「認知行動療法」と活動性の向上に焦点を当てた「行動活性化療法」などがあります。
ここでは「行動活性化療法」について説明します。
行動活性化療法
やりがいのある行動や楽しい活動をすることで、こころを活性化させるという方法です。日常的な言葉でいえば、気分転換とか気晴らしといったものでもあります。
私たちがやる気が出るのは、何かをして「良かった」と思うからです。「良かった」「楽しかった」と思えば、「またやってみよう」と考えるようになります。「行動活性化」というのは、そのようにポジティブになれる行動を無理のない形で少しずつ増やしていって、行動を通してやる気を出していく方法です。
行動活性化は、まず行動を振り返ることから始めます。そして、つらくなった行動を減らし、気持ちが軽くなった行動や楽しめた行動、やりがいを感じられた行動を増やしていくようにします。言ってみれば、上手な気分転換のコツが「行動活性化」です。行動に優先順位をつけて行っていくとより良いでしょう。
確かに落ち込んでいるときには、「何もできていないのに、楽しいことをするなんて考えられない」「体が重いから動けるわけがない」と考えて、何もしないでいることがあります。
しかし、それで気持ちや身体が楽になるかというと、かえっていろんなことが頭に浮かんで、つらくなることの方が多いのです。そうしたときには、無理のない範囲で体を動かしてみましょう。特にカラダを動かすことは脳の活性化につながり、脳内のホルモンバランスに働きかけてくれるので効果が大きいです。
- ストレッチをしてみる
- 散歩に出てみる
- 運動をしてみる
- 誰かとたわいもないおしゃべりをしてみる
- 趣味を楽しんでみる
- 楽しいと思えることだけやってみる
上記のようなことをすると、意外にも気持ちが晴れて落ち着くことが多いのです。
運動は、ウォーキング・ジョギングなどの有酸素運動がいいのですが、ゆっくりとストレッチをしたりするだけでも違います。運動は絶対嫌だという人は、音楽鑑賞をして和むのもよいでしょう。
映画鑑賞でもカラオケでも、楽しめそうなことを無理のない範囲で試してみます。旅行に行くのが好きな人は、旅行に行ってもいいでしょう。
でも、いまの体力では旅行はとうてい無理だというときには、友達に電話をして旅行の話をするだけでもいいかもしれません。
「意欲」を育てる必要性
大事なことは、まずはできそうなことから少しずつ始めるということです。私たちの意欲は、何かをやるというところから生まれてきます。
「どうせ何をやってもできない」と思っていると、本当に何もできなくなってきます。すると「やっぱりダメだった」という気分に駆られてしまい、より一層悪循環に陥ります。つまり、行動ができないと「ダメだ」という認知が強化されてしまうのです。
しかし、行動をして何かできると、そこで「ダメだ」という認知が「できた!」という認知に修正されます。
その時に注意しないといけないのは、「難しいことをしようとしない」ということです。ちょっとしたことでもできたら自分をほめるようにしてください。
ちょっとした1日の目標を達成したという気分になるという感じでしょうか。そうすると「何もできない自分」「ダメな私」という認知だった自分の心境が「今日はこれが出来た」という小さな達成感が生まれ、変わってきます。焦らないで少しずつ前に進むことです。
しかし「ほどほど感」は大事にしてください。一挙に頑張ってしまうと、あとで反動が出て疲労感から気分が落ちこむことがあるからです。だからこそ、ほどほど感を意識して、少しずつ取り組んでみましょう。